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2008年8月

不活動時間の労働時間性

【大道工業事件・東京地裁平成20年3月27日・労新2694】
○寄宿舎に寄宿させ、シフト担当日に修理依頼があれば現場に赴いて修理業務に従事す
 るという形態の業務。
 労働者側は、修理依頼のない場合であっても、シフト担当日は不活動時間を含めてその
 全体が労働時間であると主張し、サービス残業代等を請求した事案。
○シフト担当日は、修理依頼があれば現場に赴くことが義務づけられているが、
 1 修理依頼の程度は1日1回以下
 2 修理依頼がある場合でも実稼動時間は5時間以内となる日が多い
 3 不活動時間においては、自室でテレビを観賞したり、パソコンに興じたりしており、
   外出には特段の規制もなく、食事・入浴などの日常活動を行っていた。
 従って、指揮命令下に置かれているとは評価できないとして労働時間性を否定した。
○大星ビル管理事件以降、何かあれば対応しなければならない以上、不活動時間全て
 が労働時間であるかの如き誤解が広まっており、そのように主張する労働者・労働組合
 も多い。
○しかし、指揮命令下にあるか否かは、実作業に従事する頻度、業務自体の負担の重
 さ、契約上の義務付けの強さ、場所的拘束性、自由度等のファクターの総合考慮によっ
 て判断されるものであって、手待ち時間(労働時間)と呼び出し待機(非労働時間)の
 区別は程度問題であろうと思われる。
 義務付けがなければ労働時間でなく、義務付けがあっても頻度が少ない等の事情があ
 れば、労働時間性が否定される。
○新日本管財は義務づけがないとして、そして互光建物管理は義務付けはあるが、
 頻度が少ない等の事情で、労働時間性が否定されている。
 大林ファシリティーズ事件(最高裁)は、マニュアルで時間外においても住民対応
 すべきことが記載されており、一般的指示のあった事案であり、義務付けが濃い
 事案であるという特殊性があるので、会社側が敗訴したと整理ができると
 思われる(経営法曹57号ー15参照)。
●ビル管理、警備、夜間の電話番等労働密度は低いが拘束時間の長い業務の存する
 会社の場合は、全てが労働時間と認定されると莫大な未払賃金が発生する。労働時間
 と認定されないような対策が必要である。

 

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派遣社員の交代と給与支払い義務

【三都企画建設事件・大阪地裁平成18年1月6日判決・労判913-49】
○勤務成績不良として勤務先から派遣社員の交代要請があり、それに派遣元が応じた
 場合、派遣元は派遣社員に対して賃金を支払う必要があるか?
○派遣元は派遣先の日頃の勤務状況について、これを良く知る立場にはなく、派遣先の
 主張を争うことは極めて困難である。従って、派遣元が派遣先の交代要請を争わずに交
 代に 応じ、派遣社員の就労が履行不能となった場合、特段の事情のない限り派遣社
 員の賃金請求権は消滅する(民法536条2項の適用はない)。
 (私見)派遣元に過失はないので、536条2項の適用はないということと思われる。
○ただし、派遣社員に債務不履行事由が存する場合を除き、労基法26条にいう「使用者
 の責に帰すべき事由による休業」に該当し、派遣社員は休業手当の支給を求めることが
 できる。
○以上2点が裁判所の判断である。派遣社員の勤務態度が悪いが故に交代を余儀なくさ
 れた場合には、以後派遣社員に対して賃金を支払う必要がないという根拠として使える
  判例である。
●派遣元は派遣先からの交代要請に応じざるを得ない立場にあるので、派遣元としては、
 派遣先から交代要請があった場合の取扱いについて、明確に契約書で記載しておいた
 方が良いと思われる。
 1 派遣先から交代要請があった場合には、期間途中でも解雇するという約定
   →法的には労働契約法17条の強行法規性から無効であろうが、実務的には有益
 2 派遣先から交代要請があった場合において、派遣労働者に帰責性がある場合
   には賃金を払わないという約定
   →本当に帰責性があれば有効であろう。最悪でも60%払えば足るはず。

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