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2008年12月

上司の注意指導と部下の自殺

【海上自衛隊事件・福岡高裁平成20年8月25日判決・労経速2017-3】
○海上自衛隊員が、上司である班長から行過ぎた注意指導を受けていたとして、護衛艦
 乗艦中に自殺した事案。
 9月頃から「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ」「お前は覚えが悪いな」「バカか
 お前は。三曹失格だ」などと厳しい注意をしており、11月に自殺している。
○裁判所は、指導の域を超えるものであったとして不法行為を認定した(賠償額損害額
 350万円)。
 理由1 
 できるだけ早期に任務に熟練させる必要があったことは認められるが、経験年数に
 照らせば技能練度不足があることはある程度やむを得ず、同様の隊員もいるので、
 心理的負荷をかけてまで指導を急ぐ緊急の必要性はない
 理由2
 特に緊急を要しない場面で繰り返し言われたし、個々の行為や技能について言われる
 に留まらず、地位階級に言及し、人格的非難を加えたものというほかない。
 理由3
 厳しい指導を行った後に心情を和らげるような措置もとっていない
○いじめ(典型的なパワハラ)を認定したものではない。
 通常の指導が行き過ぎとして違法性が認定したもの。
○理由3については、法律の問題ではなく、通常の人事労務管理の中でも重要なこと
 と思われる。
○1審は遺族の請求を棄却している。

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過剰なノルマによる従業員の自殺

【前田道路事件・松山地裁平成20年7月1日・労経速2013-3】
【人マネ2009-1】
○不正経理(架空受注等)を行った営業所長に対して、それを是正するように叱責し
 たことが原因で自殺したことについて、会社の安全配慮義務違反が認定された
 事案(過失相殺6割)。
○裁判所は、次のようなファクターを挙げて安全配慮義務違反を認めている。
 ・架空出来高約1800万円を遅くとも会計年度の終わりまでに解消することを踏まえた
 上での事業計画の目標値は、当時の営業環境に照らして達成困難な目標値であった
 ・毎朝工事日報を報告させた
 ・ほかの職員が見ても明らかに落ち込んだ様子を見せるまで叱責したこと
 ・会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならないなどと叱責
  会社を辞めなければならなくなる程苦しい立場にあることは認識していたことの
  裏づけとして裁判所に使われている(21年1月15日追記
●しかし、そもそも不正経理を始めたのは当該営業所長に責任があり(過剰なノルマ達
 成が強要されていたという事実もない)、それを叱責されるのは当然であり、また事業
 計画についても目標値に過ぎない(できるだけ努力して、無理なら新年度からスタ
 ートすれば良いとも指示していた)のであり、叱責等に違法性があるとの裁判所の判断
 は極めて疑問。
 また、予見可能性についての認定も甘い(落ち込んでいたことを認識していたとしても、
 自殺は予見できない)。
●地方の権威のない裁判所ということもあるが、改めて訴訟となることのリスク(時に過剰
 なほど労働者保護の判断を行う裁判官がいるというリスク)を認識させられる事案であ
 る
高松高裁平成21年4月23日判決(労990-134)で取り消されており、当然である。

 
 

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派遣契約解除と派遣先の責任

【タイガー魔法瓶事件・平成20年12月11日大阪地裁和解・新聞情報】
○派遣可能期間を超えて派遣労働していた派遣労働者の契約が解除された事案
 において、派遣労働者が派遣先に対して直接雇用の確認と慰謝料の支払いを
 求めた事案
○派遣先が派遣社員に300万円支払って和解したとの内容
○派遣可能期間を超えていたという点及び、そのことを申告した直後に契約を解除
 されたという点、不当労働行為が認定されていたという点で特殊事案である。
 一般的に派遣先が契約解除の責任を負うという趣旨ではない。

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