労災

過剰なノルマによる従業員の自殺

【前田道路事件・松山地裁平成20年7月1日・労経速2013-3】
【人マネ2009-1】
○不正経理(架空受注等)を行った営業所長に対して、それを是正するように叱責し
 たことが原因で自殺したことについて、会社の安全配慮義務違反が認定された
 事案(過失相殺6割)。
○裁判所は、次のようなファクターを挙げて安全配慮義務違反を認めている。
 ・架空出来高約1800万円を遅くとも会計年度の終わりまでに解消することを踏まえた
 上での事業計画の目標値は、当時の営業環境に照らして達成困難な目標値であった
 ・毎朝工事日報を報告させた
 ・ほかの職員が見ても明らかに落ち込んだ様子を見せるまで叱責したこと
 ・会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならないなどと叱責
  会社を辞めなければならなくなる程苦しい立場にあることは認識していたことの
  裏づけとして裁判所に使われている(21年1月15日追記
●しかし、そもそも不正経理を始めたのは当該営業所長に責任があり(過剰なノルマ達
 成が強要されていたという事実もない)、それを叱責されるのは当然であり、また事業
 計画についても目標値に過ぎない(できるだけ努力して、無理なら新年度からスタ
 ートすれば良いとも指示していた)のであり、叱責等に違法性があるとの裁判所の判断
 は極めて疑問。
 また、予見可能性についての認定も甘い(落ち込んでいたことを認識していたとしても、
 自殺は予見できない)。
●地方の権威のない裁判所ということもあるが、改めて訴訟となることのリスク(時に過剰
 なほど労働者保護の判断を行う裁判官がいるというリスク)を認識させられる事案であ
 る
高松高裁平成21年4月23日判決(労990-134)で取り消されており、当然である。

 
 

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労災関係裁判例

【O技術(労災損害賠償)事件・福岡高裁那覇支部平成19年5月17日・労新2672】
○事案
 建築請負工事の孫請会社の従業員が死亡し、遺族が元請業者に対して、安全配慮義
 務違反を理由として損害賠償請求した事案。
○1審(那覇地裁沖縄支部平成18年8月31日)は安全配慮義務違反を否定。
 具体的作業指示をしていたのは孫請の現場代理人であり、元請は図面通り施行するよ
 うに指示していたに過ぎない、というのがその理由。
○本判決は、元請は孫請従業員に対して直接の指揮監督を行っていたことは否定しなが
 ら、孫請の現場代理人を通じて指揮監督していたと認定して、安全配慮義務違反を認め
 た。労災防止の注意指導を直接していたこと、元請の制服を貸与していたこと等の事情
 も安全配慮義務認定の理由としている
○元請が下請の従業員を直接指揮監督していたという事実関係であれば、元請の安全配
 慮義務違反が認められるのは当然である(三菱重工業神戸造船所事件・最高裁平成3
  年4月11日)。結局は、指揮監督関係の有無及びその程度によると思われる。
●建設関係の会社として、下請従業員を直接指揮監督すること、その他直接注意指導等
 を行うことが法的にはリスクあることを認識するべきである。
 なお、労災保険だけで損害賠償は全額カバーされないこともあわせて再認識する必要
 がある。

 

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